平成24年壬辰、西暦2012年の年が明けた。
目出たいのかと問われれば、首を横に振らざるを得まい。
日本の株価は昨年末の大納会で29年ぶりの安値(終値8455円)を付けた。リーマンショックが長引いたとか東日本大震災の後遺症だとか、安値の言い訳をいくら言ってみても唇が寒いだけだ。東南アジアの国々も、オーストラリアも、カナダも、アフリカや中南米も(戦争状態にあるか財政破綻を起こしそうな特殊な国を除いて)経済成長のプラスのスピードが落ちそうで景気減速と言っているのであって、まともな先進国で、20年来このかたデフレ政策を頑に堅持してGDPをシュリンクさせ続けている(しかも超円高も放置したまま)のは、唯一日本だけなのである。政治家も財務当局も日銀も、デフレ状態を前提としてしか分析も構想も企画もできなくなっているのではないだろうか。
NHK「坂の上の雲」の203高地の攻防戦のシーンは圧巻であった。乃木軍は伊地知参謀長の作戦により難攻不落な正面作戦に固執したため、全く埒があかず軍の消耗は大きくなるばかり。見かねた児玉総参謀長が奉天から単身引き返し、乃木から指揮権を預かるや、作戦本部を戦場近くへ移動、兵の投入を203高地に集中、28サンチ砲を自軍の後ろから敵陣地に撃ち込ませる等、これまでの常識にない作戦を次々に指示し、あっという間に状況を逆転させてしまったのだ。
別に兵を入れ替えた訳ではないし、魔法を使った訳でも勿論ない。
只、将兵の意識を変え、昨日までの常識を覆して効果のある作戦を遂行させ、果敢に勝利にチャレンジさせたに過ぎない。大阪秋の陣で奇跡的な勝利を得た橋下市長の「不連続への挑戦」とは、この事なのである。
閉塞感に浸りきって出口の見えない日本は、まさに今、この歴史の教訓に学ばなければならないと思う。
日本への投資を妨げているつまらぬ規制を取払って世界のマネーを呼び込み、税金を下げて経済波及効果の高い民間部門へ資金を還流し、国内の制約やしがらみを大胆に取払って産業を活性化させ、経済成長をおおいに促すことにより税の自然増を計る事だ。もとより商売の要諦は「入るを計って出ずるを制す」であるが、この「入る」とは「政府へ」ではなく、「国民へ」である事は言うまでもない。しかしマスコミ等はこの事を間違って認識しているから、財政破綻の処方箋は消費税増税だ等と全くの勘違いをあたかも正論であるかのように報道してしまうのだ。
世界情勢は、思った以上に厳しさを増している。中国の不動産バブルの崩壊による経済成長の失速、ギリシャの財政破綻に発したユーロ安、北朝鮮の指導者の交代による東アジアの政情不安・・およそ、日本に関してはいいことは一つもないのに、国内の政策が旧態依然と逡巡を続けるばかりでは、比喩ではなく、この国は滅びの道を転げ落ちるしかないと思う。
鯉が滝を登って龍になるほどの大胆なメタモルフォーゼが、今年の日本には必要なのだ。
国難に直面している今、はたして、この国の指導者にその力が生まれるか、どうか。
今年の年頭に当たって、良い方の目が出る事をせつに祈るばかりである。